えーと、この頃、文章を要約する機会が増えまして(具体的には父と自分の病状の説明)ようやく(わざと『ようやく』を二度使いました)言語化できてきました。

 このシーズンだと、受験生の方々に役立つ技術/情報だと思うので、書き記しておきます。

 ちなみに、私はセンター試験(今年で終わりだね)で95%くらい取る実力です。残りの5%は漢字の書き取りで「あと5%の点を取るために漢字の書き取りを勉強するくらいなら、他の科目で5%分稼ぐ」という戦略をとった結果です。

 私は受験生だった時分には、東工大5類に受かりました。化学があまりに出来ないので東大に行くことは捨てました。慶応に受かって早稲田に落ちました。早稲田大学に行きたい人は漢字の書き取りを頑張って下さい。早稲田の入試問題はそんな感じの大学です。

 ちょっと脱線しましたので、もとの道に戻ります。選んだ題材は平野啓一郎氏の「日食」です。芥川賞を取った小説です。小説を読んでいなくても大丈夫です。たいした作品じゃ有りません。以下がWikipediaから引用したあらすじです。

あらすじ
第1段落:《1482年》の《フランス》南部、神学僧であったニコラはトマス主義に傾倒してキリスト教と異教の古代哲学の融合を志し、『ヘルメス選集』の完本を求めてパリからリヨンへと赴く。ニコラはリヨンで目的を達成することができず、司教からフィレンツェへ行くように勧められるが、その際に、ヴィエンヌの教区にある村落で研究を続けている錬金術師に相談を持ちかけるよう助言される。

第2段落:村落に到着したニコラは村の司祭ユスタスから、錬金術師ピエェル・デュファイの居場所を教えられる。酒場を兼ねた宿屋に宿泊することとなったニコラは、村全体が幾何学模様を描くように作られていることに興味を示すが、その際にピエェルらしき人物を目撃する。宿の主からはピエェルに会わないよう忠告されつつも、ニコラは錬金術の工房となっているピエェルの家を訪れ、その書棚にあった目的の書物『ヘルメス選集』を目にする。ニコラはピエェルから、5日後にここに来るよう告げられ宿へと帰されるが、その帰路で村の鍛冶屋でありピエェルの崇拝者であるギョオムと顔見知りになり、その夜の宿の酒場ではギョオムの妻と司祭ユスタスが過去に姦通して不義の子を産んだという醜聞を耳にする。後日、ニコラは堕落した村人たちの教化を行なっている修道僧ジャック・ミカエリスの訪問を受ける。《異端》審問官でもあるジャックはピエェルについて調査を進めていた。

第3段落:再びピエェルの元を訪れたニコラは、錬金術師たちが追い求める物質「賢者の石」についての談義を聞かされ、自分が求める神への信仰と異端の思想の融合を見いだすもののその内容に疑念を感じ、異端の存在を憎んでいるジャックのことを思い出して複雑な思いを浮かべる。やがてニコラはピエェルの家に通って蔵書を読むことを許可され思索を深めるが、ピエェルが悪魔が出現すると噂される森に毎日通っていることに対して不信感を抱く。ニコラは密かにピエェルを尾行し、森の中にある洞窟へと足を踏み入れ、その中で黄金色に発光する《両性具有者》を目撃する。神とも悪魔とも、錬金術の人造人間ホムンクルスともつかない全裸の両性具有者に対し、ピエェルがその乳房、男性器、女性器にうやうやしく接吻する姿をのぞき見たニコラは、ジャックから聞かされていた魔女のサバトの儀式を連想し、その場を逃げ出す。この日の出来事を境に村人の間で、夕方の西空に雲よりも背の高い巨人の男女が現れ、後背位で性交に耽る姿を見たという者が現れ始める。更に村は聖アントニウスの火の病と呼ばれる奇病や、冷害、豪雨といった天災にも悩まされるようになり、人々の心もすさんでいく。ジャックは一連の出来事を魔女の妖術によるものであると扇動し、村人を魔女狩りに焚きつける。ニコラはピエェルを案じるが、ジャックが捕らえたのは、洞窟から村へと迷い出てきた両性具有者であった。

第4段落:その後巨人が目撃されることはなくなったが、村の災厄は続き、両性具有者は魔女裁判を通して火刑に処せられることが決まる。村人たちは刑場に引きずり出された両性具有者に石を投げつけるが、その左右で色の異なる瞳が見開かれ、傷つけられた肉体から神々しい芳香が立ち昇るのを前にすると動揺する。処刑が始まっても両性具有者は泣きも叫びもしなかったが、身を《焼か》れ始めるとけいれんを始め、すると突然に空は暗くなって《皆既日食》が始まり、同時に男女の巨人が再び現れ、村人たちが恐れ慄く前で性交を始める。両性具有者は身を焼かれつつも男性器を《勃起》させ、虹を描きながら膣外《》射精》された精液を自らの女性器で受け止める。その姿を見たニコラは両性具有者と《霊的に共感》し、《宇宙との神秘的な合一を体験》する。

第5段落:両性具有者は骨も残さず消滅するが、進み出たピエェルは灰の中から赤みを帯びた金塊のような物質を拾い上げ、それをとがめたジャックに捕らえられる。ニコラはジャックの勧めで逃げるように村を去り、本来の目的地であるフィレンツェへと向かう。後年になってニコラは神学者として成功を収めるが、同時に虚しくもなる。ニコラは後になって、ピエェルの存在をジャックに密告したのがギョオムであったという真相を知らされる。ニコラは読者に対して、最近になって錬金術の研究を始めたことや、両性具有者が焼かれる瞬間に垣間見た金属の輝きのこと、かつては両性具有者の正体が《イエス・キリスト》の《再臨》であった可能性に思いを巡らしたことなどを語り、物語を締めくくる。 (ちょっと加工しました。ごめんなさい。キーワードだと思ったものに《》をつけました。)引用ここまで。

 さて、真面目に読んだ人は、ご苦労様でした。実は、私に言わせると、これは『あらすじ』ではありません。だって長いじゃん。長すぎるから。私が試験官で生徒に「日蝕」のあらすじを要求したときに、こんな文章を提出された日には、赤点つけて紙飛行機にして投げ捨てます。これは、センター試験の現国の長文読解に出ておかしくないほどの長文です。

 さてさて、試しに私が『要約』してみましょう。えいやー!

「昔フランスで異端の、両性具有者が焼かれる皆既日食のとき、私は思わず興奮して、いっしょに射精してしまったよ。あれは、もしやキリストの再臨の可能性もあった。」

 以上です。簡単すぎるじゃないか!と起こる方も多いと思いますので『単語』に分解していきます。よっと!

「昔/フランス/で/異端/の/両性具有者/が/焼か/れる/皆既日食/の/とき/私/は/思わず/興奮/し/て/いっしょ/に/射精/し/て/しまっ/た/よ/。/あれ/は/もしや/キリスト/の/再臨/の/可能性/も/あっ/た/。/ 」

 日本語が本当にプロい人からすると、もっと単語に分解できるかもしれませんが、こんなもんで十分でしょう『名詞』の意味が分からない人は、おいてけぼりにしつつ、解説していきます。実は『5W1H』を意識して要約しています。『5W1H』が分からない人はググって下さい。

 解説いきま~す。とうっ!

昔:whenです。ざっくり中世であることを表現しました。
フランス:whereです。
で:てにおはです。適切に使って単語をつないでいきましょう。
異端:そこはかとなくキリスト教の雰囲気を出しています。裁判にかけられた感も出ます。howです。
の:てにおはです。
両性具有者:『男と女の両方のようそを備えている人』という意味です。キリスト教的には人間には男と女しかいないのでLGBTsのような存在はNGなのです。「異端」を強めてもいます。whoでもあります。
が:てにおはです。
焼か:動詞「焼く」を格変化させます。
れる:受身です。「両性具有者」を形容したいのです。
皆既日食:太陽と地球の間に月が入って太陽が全部隠れる天体現象です。howです。
の:てにおはです。
とき:whenです。
私:whoです。ポイントは、「私」は主人公であり、同時に作者でもあります。それが『純文学』のおおくが『私小説』とよばれるゆえんでもあります。

思わず:無理矢理whyをねじ込みます。自分の意思ではないことを表現しています。《霊的に共感》を無理矢理縮めています。
いっしょ:《宇宙との神秘的な合一を体験》を無理矢理縮めています。
に:てにおはです。
興奮:what/whyです。《勃起》を丸くしてみました。
し:動詞「する」を格変化させます。
て:てにおはです。
射精:whatです。「私」が「両性具有者」に対してエロスを感じていることをうかがわせます。
し:動詞「する」を格変化させます。
て:てにおはです。
しまっ:動詞「しまう」を格変化させます。
た:助動詞です。過去形です。
よ:終助詞です。主張を強める終助詞ですが、日本人的には「射精」の意味を軽くする効果があります。
。:文の終わりには必ず「。」をつけることを忘れないようにしましょう。
あれ:「両性具有者」のことです。
は:てにおはです。
もしや:「可能性」を強調します。
キリスト:whoです。
の:てにおはです。
再臨:whatかな。
の:てにおはです。
可能性:howかな。
も:てにおはです。
あっ:動詞「ある」を格変化させます。
た:助動詞です。過去形です。
。 :文末です。

 あ、「、」は読みやすいよう適宜入れましょう。テクニックです。

 これで終わりです。よくよく私が要約した文章を見ると、全ての段落から少しづつ『要素』を拾っていることが分かるかと思います。

 漢字にするかひらがなにするか迷ったときはひらがなを使いましょう。テクニックです。

 オリジナリティーはほとんど要りません。

 これが出来るようになると、ほとんどの長文をナナメ読み出来るようになります。これを身につけても読み取れない長文なら捨てても大丈夫です。そんな文章は誰も読み取れません。はっきり言って悪文です。(400字詰め原稿用紙換算13枚、1時間40分くらいで書きました。ATOKで統計的にみると、これが私の限界らしいです。)

-2020/01/28 12:35 追記-
この記事は「ドラゴン桜2」に触発されたもので、「ドラゴン桜2」の作者の主張(記述式の問題は想像力を計るのではなく、テクニックを計るものである。)を超える物ではありません。

ただ、漫画というフォーマットだと、例題の全文を載せて、解答を作る際の細々としたテクニックは伝えられないだろうと思い書きました。そもそも1ないし2ページにわたって問題文が載っている漫画を全力で読む読者は、そんなにいないと思いますし、それが出来る人は、そもそも国語力が高いだろうと推察します。

私の感覚で言いますと、記述式の新試験は国語力のある人には、むしろ容易になると考えています。

なぜなら、今までのマーク式では、消去法で残った二択から微妙なニュアンスを汲み取らなければいけなかったものが、自分の言葉(もちろん全てのキーワードを押さえつつ)の範囲で自由に書けるからです。

個人的には新試験の国語の受験生の点数が、正規分布するのではなく二極化する事を危惧しています。

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